天井を見つめて
先日母と話していたら、小さい頃の話になった。
「あんたたちを二人で寝間へ寝せていても、弟は淋しがってすぐ起きてきてたねえ」
「私が、子供たちだけで寝てなさいって言われたから、あっちへ行っちゃだめだって言っても、行っちゃうんだよね。」
今から思えば、私より二つ下なのだから、甘えん坊でもしょうがないのだが。
弟が起きていった後、こっそり起きて、障子の穴から茶の間を見ていたことがある。弟は、両親の間に座ってはしゃいでいた。
あっちに行きたいなあと思ったが、長女ゆえの悲しさか、いいつけを守ろうと、私は一人お布団に帰っていった。
「あの頃はねえ、子供は子供だけで別の部屋へ寝せて、甘やかさないっていうのが、よい子育てだっていうのが流行っていたんだよね。」と母は言う。
西洋式の子育てだったのだろうか。そういう時代だったのだろう。
「どうしているかなと思って、こっそり見に行ったら、天井をじっと見ながら、ぶつぶつぶつぶつ何かを言っていたよ」
あちらも見に来ていたわけね。
一人になって、天井をじっと見ていたのは、よく覚えている。木目がいろいろなものに見えて、怖いやら、面白いやらで、一人で妄想していた。
そして、何をつぶやいていたかも、実は覚えているのである。それは、
「弟ばっかり、いいな。起きても叱られなくて。私はいいつけを守っているのに。大人は嘘つきだ。」
そしてその後は、
「不幸になってやる!大きくなって不幸になれば、きっと、育て方が悪かったって、気づくはずだわ!」
結構、子供はおそろしいことを考えている。
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