ムーミン谷と江戸


児童文学が好きだ。子どもの頃から、大人になっても読んでいる。特に好きな話はいくつかあるが、ムーミン谷の物語も、その一つだ。
先日、久しぶり「ムーミン谷の十一月」を読んだ。
あれ、こんな話だったっけ、とか、こんなセリフがあったんだ、など、本は読み返すと、いつも新しい発見がある。
ムーミン谷の十一月は、ムーミンが出てこない物語だ。ムーミン一家に会いたくて集まったものたちが、ムーミン一家抜きで、しばし一緒に暮らすことになる。皆は、自分勝手で、相手を振り回し、静かに作曲をしたいスナフキンを一人にしてくれない。
その時のスナフキンのことば。
「はっと、きゅうにスナフキンは、ムーミン一家がこいしくて、たまらなくなりました。ムーミンたちだって、うるさいことはうるさいんです。おしゃべりだってしたがります。どこへ行っても、顔があいます。でも、ムーミンたちといっしょのときは、自分ひとりになれるんです。いったい、ムーミンたちは、どんなふうにふるまうんだろう、と、スナフキンはふしぎに思いました。夏になるたびにいつも、ずっといっしょにすごしていて、そのくせ、ぼくが、ひとりっきりになれたひみつがわからないなんて。」

おしゃべりで、好奇心旺盛で、おせっかいで、いつも顔を突き合わせているのに、窮屈じゃない。一人一人は、一人でいることができる。
ん?こんな感じ、なんだか他で感じたような。
そうだ。江戸だ。江戸の町は、おしゃべりで、好奇心旺盛で、おせっかいな人たちが、顔を突き合わせて暮らしている。だけど、こざっぱりしていて、適当に距離のある関係だ。べたべたしてなくて、冷たくなくて、無関心じゃない。見て見ぬふりをしていて、必要とあらば、手を差し伸べる。江戸の町って、そんな気がする。
そうか、そうなんだ。
ムーミン谷に江戸の町をみた。どちらもわたしの好きなもの。

2018-02-02 | Posted in こども, ブログ, 江戸Comments Closed 

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