はみ出した心と和室

「あ、今日から春が来た!」と、思う瞬間がある。
ある日の小学校の帰り道、降り注ぐ日差しに、積もった雪が溶け始め、あちこちで焦げ茶色の土が顔を出していた。そして、そこから立ち上る暖かい湿り気を帯びた土の匂いを嗅いだ時、「あ、今日から春が来た!」と思った。
またある日は、つららの先からぽたぽた落ちる水滴の光が、その日から、暖かな光に変わっていたことに気づいた。その時も、「今日から春だ!」と思った。
先日も、二階の窓からの景色が、「おや、春が来ているぞ」という感じになっていた。こうなると、どうにも浮き浮きして、室内でじっとしていられなくなる。しかし、その日は、春の空気を楽しみながらお散歩するほどの時間は、残念ながら無かった。しかし、私の気持ちは、春を感じたくて、もう家の中からはみ出してしまっている。
そういう時は、二階の洋間には、いられなくなる。そして、私は一階の座敷へ降りる。そこは、南向きに縁側があり、外の景色は丸見えだ。畳に座れば目線が下になり、外とつながっているかのような気分になれる。心が自然の中にはみ出してしまっているような時、和室は実に心地が良い。洋室はどうしても外から囲うもの、和室は外とつながるもの、特に縁側はあいまいな空間だ。縁側と和室は、外にはみ出した心にちょうどいい。
私は日本家屋好きだ。
それは、空想がちで、いつも心がはみ出していた子だったからしれない。

2016-03-10 | Posted in つれづれ, ブログNo Comments » 

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