生まれたての雲
今日は、雨模様。春の雨は、やわらかく、田んぼや山は、うすぼんやりと湿り気に包まれている。移動中の新幹線から山の方を見ると、山肌から何本も白い靄が立ち上っている。
「あ、雲が生まれている」
次から次へと、行く手の山々にも、靄が湧いている。
「あの雲の水蒸気は、もしかしたら、昔、私の体の中にいたことのある水かもしれない」
ふと、そんな気がした。
「あの雲は、わたしだ」
なんの不思議もなく確信した。そして、次から次へと生まれてくる雲を見ていた。
あの雲は、やがて、雨になり、いつかまた私に帰ってくることが、あるのかもしれない。
その日まで、またね。