複素数は美しい

日照り続きだったが、先日、待望の雨。ほおずきの花が咲いている。

先日、何人かで話していたら、「数学嫌いだったでしょ?」と聞かれた。
三味線やっているし、文系出身だし、そう思われても無理もない。
ところが、私は数学は大好きだった。
父が高校の数学教師というせいもあるかもしれないが、子どもの頃、「数学パズル」というようなタイトルの本を買ってもらい、面白いなあと思って読んでいた。だから小さい時からの、数学好きである。
数学の授業で一番好きだったのは、公式の証明だ。なぜこの公式ができたのかという解説は、なぞとき物語のようで、とても面白かった。数式が美しく流れ、ひとつの答えが出る。答えが、すぱっとひとつでない国語よりも、面白いと思っていた。
ある日、複素数を学校で習った。今までの何よりも面白かった。二乗してマイナス1になるという数を想定してみると見えてくる世界は、本当にワクワクした。早速帰って父に報告した。
「今日、複素数を習ったよ。面白いねえ」すると、父は笑顔で答えた。「複素数か。あれは美しいだろう」
美しい。そうか、私がこれはすごい!と思ったことは、美しいということだったんだな。父はとても楽しそうに笑っていた。美しいということは、楽しいことなんだと思った。
今は、複素数という言葉は覚えているけれど、面白い!と思った解説の方は忘れてしまった。でも、「複素数は美しいだろう」と言った父の笑顔は、今でもはっきり覚えている。
面白いこと、美しいことを、楽しめる。その力は、あの日の父から、もらったのかもしれない。

2016-06-22 | Posted in つれづれ, ブログComments Closed 

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