神様の喜び

秋の日は釣瓶落とし。日に日に日暮れが早くなっていく。夕暮れ時に見る庭の花たちは、なにか語りかけてくるような気がする。


太神楽という芸能がある。獅子舞や曲芸で、みんなを楽しませる芸だ。もともとは「お祓い」だそうで、悪いものを祓うことだという。太神楽には、大切にしている三つの魂があるのだそうだ。
一つは数でお祓いする「数魂」。三、五、七、八が縁起の良い数で、獅子舞の足運びや、太鼓の打ち方もこの数字にならっているそうだ。
二つ目は「音魂」、鬼は大きな音が苦手なので、生演奏でにぎやかに獅子舞をやったりするのだそうだ。
三つ目は「言魂」。「ツルは千年、カメは万年」などと、言葉でおめでたいお祈りをするもの。
こうしてお客さんが縁起良くなった先には、必ず神様がいるのだという。というのは、喜ぶ人の姿を見るのが神様の喜びなのだそうだ。
なんだか、すごくいいなあ。日本の神様。
先日のお浚い会を思った。
まず数魂。端唄は、七五調の歌詞が多い。「梅にも春の 色添えて」「春雨に しっぽり濡るる うぐいすの」。
そして、音魂。幕開きにチョンチョンとキを打ち、後は三味線や笛、鉦、太鼓、小鼓とにぎやかだ。
そして言魂。「めでためでたの若松様よ~」と、おめでたい言葉が唄には並ぶ。
きっと、神様も沢山見に来てくれていたかな。わいわいと楽しく演奏している舞台や客席の周りに、大黒様や恵比寿様の満面の笑顔が取り囲んでいたかも。
お浚い会の最後には、全員で手締めをして、キで終わる。
これはきっと、最後に大きな音を出して、追い出されて出口のあたりにいる鬼たちがお帰りのお客様について行かないように、追い払うために違いない。
打上げの盛り上がりを思うと、鬼は退散、神様も一緒に飲んでいたかもね。
めでたし、めでたし。

2016-10-19 | Posted in ブログ, 邦楽文化Comments Closed 

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