夏の夜

ヒグラシが鳴き始めた。なんだか少し淋しい。夏も下り坂に入った。公園の木には、蝉の抜け殻がいっぱいだ。

今日もたくさんなっているなあ。キュウリにトマト、と、せっせと収穫をしていた朝。
「ギャー、またこいつがあ~」母の叫び声が、畑に響く。
何事か?
「この気持ち悪い虫が、八つ頭についている。いやだあ」とか言いながら、虫をとって踏んでいる様子。
なんでも、毎年八つ頭につく虫で、バリバリと葉っぱを食べられてしまうのだそうだ。
恐る恐る行って見てみる。
「ほらあ、ここにもいる」と指差す母。
黒い身体に角がついている。そして、横側には、黄色の点々。ちょっとグロテスクでちょっと派手目のおしゃれ。角が出ているのが、また母はいやなのだそうだ。
ふと足元を見ると、先ほど踏み潰した虫に、アリがたくさん集まっている。
こちらは、おもいがけないご馳走を見つけ、喜び勇んで駆け回っている。
大きくなるために食事をしていたら潰されていしまった虫と、思いがけずご馳走にありついたアリ。
アリの巣では、今夜はご馳走だ!と祝宴が繰り広げられ、八つ頭の虫は、今夜は幼くして亡くなった仲間のお葬式だろうか。
我が家は、いつもどおりの、夏野菜の食卓だ。
それぞれにそれぞれ夏の夜。

2016-08-14 | Posted in ブログ, 自然Comments Closed 

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