レモンと蝶々

出稽古に伺った時、お庭を眺めるのが好きだ。

「あ、今年は順調に実がなっていますね」

昨年は、花が咲いたのに一個も実らなかったレモン。今年はたくさん実がついている。でも、何か変だ。

葉っぱが全然無い。

「アゲハチョウの幼虫がいてね。全部食べられちゃった」

にこにことご主人が笑って教えてくれた。大事にしていたレモンの鉢が丸裸、さぞかしお怒りでは。

「それでどうしたんですか」

「全部食べるまで、ほっときました」

ええっ!

「だって、かわいそうでしょう。幼虫が」

ええ、、、。

「よくしたもんで、また新しい葉が出てくるんですよ、ほら」

よく見ると、枝の先に、何枚かの葉が。

「で、虫はどうしたんですか?」

「葉っぱが無くなったら、自分たちでどこかへ行きましたよ。餌のある他の場所へ行くんでしょうね」

とまた、にこにこ。

「そうなんですか」

幼虫を育てたレモンと、それを見守ったご主人。

色づいたレモンは、やがてお弟子さんのお宅の食卓へ。

そして来年の受粉の時、蝶々がまたやってくるのだろうか。

こうやって世界は回っているんだろうか。

お庭の鉢の小さな輪。やさしい輪。

2020-09-07 | Posted in つれづれ, ブログComments Closed 

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