カエルのお引越し

今年は雪が少なくて暖かいから、庭のワビスケが早くもたくさん咲いた!と喜んでいたら、先週末の雪。お花もすっかり雪の下。

春を待って。おはなしを作りました。

<カエルのお引越し>

その年の春も、カエルは冬眠から目覚め、「よっこらしょ」っと地上へ出ました。
まだ肌寒いけれども、春が来たと知らせるように、陽はキラキラと明るく、どこまでも楽しげでした。
「さてさて」まだ動きがぎこちないけれども、カエルは歩き始め、「まずは腹ごしらえ」と、ちょっと手近なものを食べ始めました。
「おお、おいしい、おいしい」。やがて満腹になり、とってもゆかいな気持ちになりました。
「まずまずごちそうさま」
そうしてカエルの春が始まりました。
日に日に日差しは暖かくなり、優しい春の雨が降るたびに、草木の緑は濃くなりました。
「そろそろ卵を産まなくっちゃね」
そういうとカエルは、毎年卵を産むいつもの田んぼへ出かけました。
「あれ!」
いつもの田んぼは、水をはった田んぼではなく、なんと大豆畑になっていました。
「おやおや、ここは今年は田んぼじゃないんだね」
カエルは、歩いてきてくたびれていたので、ちょっと休もうと腰を下ろしました。
「こんにちは。カエルさん」
蝶蝶が飛んできました。
「あら、こんにちは」
「卵を産みにきたの?」
「そうなんだけどね、今年は田んぼじゃないから、ここには産めないよ」
「じゃあ隣の田んぼにすれば?水ももうはっているよ」
「だめだめ。あそこは別のカエルが毎年産むところさ」
「でも、まだ来ていないよ。先に産んじゃえば」
「そういうことはできないよ。それに後から来たって、卵は産むよ。そうするとオタマジャクシがあふれちゃって、みんな大変になるのさ」
「じゃあカエルさんは、今年は産まないの?」
「もし私が今年は卵を産めなくっても、この村のカエルがいなくなるわけじゃないし、それならそれでいいのさ」
「ふうーん。でもじゃあどうするの。カエルさんは今年は卵を産まないの?」
「まあまあ、まだ産まないって決まったわけでもないさ。もしかしたら、どこかに新しい田んぼや池ができていないとも限らないだろう」
「うん、、、、」
でも、蝶蝶は知っていました。この村は、だんだん人が減っています。「新しい田んぼや池なんて、あるはずもないのに」と思ったけれども、黙っていました。
「よっこらしょっ」とカエルは立ち上がりました。

「この位でいい?」
村のはずれに、越してきたばかりの家族がいました。「子供達と自然がいっぱいあるところに住みたいな」と思って越してきた家族でした。お父さんとお母さんに男の子と女の子です。この兄妹が今、お庭に池を作り上げたところでした。
「まずまず上等な池にみえるよ」水を入れながら、お父さんもうれしそうに笑っています。
「何が来るかな?」女の子はもう目をきらきらさせています。
「色んなものが来るよ。きっと」男の子もしゃがんで、水が増えていく水面を見ています。
「あ、あそこにカエルが!」女の子がカエルを見つけました。
「カエルさん、ここに住んでちょうだい。私たち、引っ越してきたばかりなの」
男の子も振り向きました。
「雨が降る前には、鳴いて僕たちに知らせてね」
カエルは二人に向かって、「ケロ」と一声鳴きました。
「あら、カエルさん、新しいおうちが気に入ったみたいね」お母さんがにっこりして言いました。

その日の夜、カエルは池に卵を産みました。今日から、カエルのお家は、このお庭です。

おしまい

2017-01-20 | Posted in つれづれ, ブログComments Closed 

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