歌の練習
先日、高齢の女性が多い合唱グループの話を聞いた。ちょっと複雑なメロディになると、必ず何人かがつかえる。そのメロディが、どうもまだうまく歌えないようだ。
そうすると指導者は、その部分のメロディをピアノで弾き、歌詞ではなく「ドレミ」で、その部分だけ繰り返して歌わせて、理解させようとするそうだ。
それでもなかなかうまくいかないらしい。
うまく歌えない女性達は、練習後の昼食の折、「いやだわ。あんなにあそこだけドレミで繰り返したってわかんないわよ。私たち、何度も繰り返し歌っていれば、できるようになるのに」と不満を漏らしていたらしい。
この話を私に話してくれた人は、洋楽の素養がある人で、「やはりお年を召した方にはむずかしいのかしら」と言っていた。
どうだろう?日本の音楽は、言葉が先にある。言葉というのは、単音や部分ではなく、流れだ。だから、繰り返し何度も聞いたり歌ったりしているうちに、体に入るというのは、とても日本人的なのではないかしら。
先日、日本舞踊について書いているものを読んだ。
はじめから曲を使って踊るのが日本舞踊の特徴で、形ごとの練習はしないのが一般的。それに対して、バレエなどの洋舞では、バーレッスンなどで一つ一つの基礎の形の練習をし、それから曲に入るそうだ。なんだか似てるな。
日本舞踊が曲の流れの中で形を習い覚えるのは、日本舞踊の振りが歌詞と密接な関係があり、日常の動作を取り入れているからなのだそうだ。
端唄のお稽古は、もちろん曲から入る。曲以外から入るなんて、考えてみたこともなかった。
でも考えてみれば、ピアノのレッスンは、曲ではなく、基礎の指使いからだったような気がする。
「曲を覚える時は、結局、その曲を何度も繰り返すのが、一番早く覚えるわよ」と昔、姉弟子に言われた。色々やってみたが、やっぱり姉弟子の言う通りだった。