夕焼け
先日の夕方、「そろそろ上がらない?」と母を迎えに畑まで行った。
向こうの里山の方は、先ほど日が落ちたばかりで、きれいな夕焼けになっていた。お彼岸が過ぎると、空気も澄んできて、夕焼けも一段ときれいになる。この日は、山の上は薄い茜色の空で、その上に濃い灰色の雲が上の方へ広がっていた。その雲の下の縁だけが、すこし幅広に真っ赤な夕焼けになっていた。
「きれいな夕焼けだね」としばし二人で見つめた。空気はひんやりして澄んでいる。だんだん頬が冷えてくるのがわかる。
「自然は美しいね」と母は言う。
本当に自然は美しい。我が一族は、この地に住んで約400年。明治の先祖も江戸時代の先祖も、きっと秋の一日の終わりに、「きれいだな」と夕焼けを見ていたんじゃないかと思う。いや、もっと前の、我が一族がここに住む前に住んでいた人たちも、そう思って見ていたに違いない。
いや、もっともっと前の、まだ人間が言葉を持つ前の時代でも、美しい夕焼けを見て、「きれいだね」という思いで皆見つめていたに違いない。
何千年前?何万年前?わからないけど、きっとそうだ。
ふと、自分が太古の夕焼けにつながったような気になる。
夕焼けは不思議だ。そして大好きだ。
(この日の夕焼けは、写真に撮れなかった。これは別の日の夕焼け)