「くるくるくる」の幸せ
商店街を歩いていたら、「くるくるくる」と楽しそうな女の子の声が聞こえた。
ちょっと先で、小さな女の子が、ベビーカーに向かって、人差し指を伸ばして、「くるくるくる」と言いながら、楽しそうに回している。
追い越す時に見てみると、ベビーカーの中には赤ちゃんがいて、目をきらきらさせながら、クルクル回る指を、追っている。
それが、楽しくってしょうがないという感じで、女の子は、「くるくるくる」を続けている。
「くるくるくる」
追い越してからも、女の子の声は、背中から追いかけてくる。
あのくるくる回る人差し指から、きらきら追いかける小さな目から、光の粒が湧き上がって、輪を描いて登っていくようだった。
「くるくるくる」
小さな声でつぶやいてみた。なんだかすごくうれしいものが、湧いてきた。
春の日差しが注ぎ込み、一段と明るくなったアーケードを、くるくるくるっと、駅まで向かった。