雨上がりの虹
研鑽会も終わって、ほっと一息。片付けも一段落したので、下駄でカラコロと歩きたくなり、着物を着て近所へ買い物に出かける。下駄はのめりの白木の後丸。軽いし、ちょっと前に体重を移動すると楽に歩けるので、大好きだ。
元々私は、ハイヒールは苦手だった。震災の日に電車が動かなくて歩いて帰った時も、着物に下駄だった。大変でしたでしょう?と言われたけど、ハイヒールや普通の靴だったら、辛かったと思う。着物に下駄だったので、歩くことは全然苦じゃなかった。
買い物の最後に、電気屋さんに入ろうかどうしようかと迷った。「明日でもいいんじゃない?」という気がしたが、「いやいや、今日のうちに済ませることはやっておいた方がよいのでは」と、理性の声がした。こういう時は、気分に従った方がうまくいくのだが、昨日は理性に従ってしまった。
そうしたら、急に土砂降り。アーケードの出口で、立ち往生になった。
「ああ、あの時の、寄らないで帰れば、って気分はこれのことね」
と思ったが、後の祭り。
だいたい、悪いことは予感があるというか、「あ、これ、このままじゃなんかまずいかなあ」という気分が、なんの理由もなく湧き上がる時は、だいたい何か起こる。
今日もこれだったか、とちょっと後悔。
少し小降りになったので傘を差して歩きだしたら、急に日が差してきた。
「あ、これ、虹が出るパターン」
まだ雨は小雨、雲の切れ間からの日差しはどんどん明るくなる。
「西からの日差しだから、こっちだ」と東の空を見ると、うっすらと虹が出ている。
「うわ、きれい」私がキョロキョロと空を見上げていると、コンビニで雨宿りをしていた女性が、「なんですか?」と聞いてきたので、「虹です。あそこに出ています」と、指を差して教えてあげた。
女性は虹をみつけ、「ああ、ほんとだ。ありがとう」とにっこり笑ってくれた。
虹は、大好きだ。虹が見られてよかった。そして、虹を教えてあげたら、喜んでくれた人がいてよかった。
やっぱり電気屋に寄ってよかったんだ。
だんだん鮮やかになっていく虹をみて、さっきのちょっと後悔も忘れてしまった。
虹はいいなあ。