長靴下のピッピ
子供部屋に並んでいる世界文学全集。それが子どもの頃の愛読書だった。
中でも一番好きだったのは、「長靴下のピッピ」。
ピッピは9歳の女の子。赤毛でそばかすだらけ、左右の色が違う長靴下を履き、大きな靴を履いて、肩には猿のニルソンがとまっている。最初の登場シーンは、家を出て散歩をするところ。まっすぐ歩いていったと思ったら、後ろ向きのまま歩いて戻ってくる。
隣の家の子ども達が、「なぜ後ろ向きに歩いているの」と聞く。するとピッピは、「なぜ後ろ向きに歩いたか?・・・わたしたちの国は自由な国じゃないこと?わたしが好きなように歩いちゃいけないかしら?」というのだ。
この一言で、すっかり私はピッピのファンになってしまった。
子ども時代というのは、楽しいけれど、結構窮屈だ。
あれをしてはいけないとか、これはこうするものだとか。何時までに学校へ行って、学校にいる間は時間割に沿って、先生の言う通りのことを、皆でしなければならないとか。
だけど、考えてみれば、ピッピの言うように、好きなようにしてもいいことまで、こうするものだと思っていたことってあったんだなあと気がついた。
ピッピは、大人の男も顔負けなほど、力が強い。そして、たくさん金貨を持っている。
なんてすてき!私は本当にピッピのファンになった。
小学校の最初の授業を、私は覚えている。
最初に、皆で絵を描いた。私は、赤い実がいっぱい実っている木を描いた。赤い実を塗っていたら、先生が「次は皆で歌を歌いましょう」と言った。まだ色を塗り終わっていなかったので「私は絵が終わってから歌います」、と言って色を塗り続けた。見ていた母は、とても恥ずかしかったらしい。
その後、学校では、時間割に沿って、皆と同じことをやるものだということを、だんだんと学習していったのだが。
なんとなく窮屈な思いが少しづつ積もっていった中で、ピッピに出会って、楽になって、楽しくなった。
先日、久しぶりに読んでみたが、やっぱり楽しい!
今度、後ろ向きに散歩してみようかな。