こういう時は
去年買ったボケの鉢に、知らない間につぼみがついていた。今年も咲くとは思っていなかったので、単純にただただうれしい。春が近づいているようだ。
中学校の時、一つ年上のK子ちゃんと私と弟で、札幌の親類の家まで旅行をした。
新津駅から青森行の特急に乗った。いきなり、私たちの指定席に人が座っている。困った私たちを、同じボックスに座っていた大学生のお兄さんが色々と面倒を見てくれた。先に座っている人たちが間違えていたとわかり、それから青森までは、お兄さんと話しながら行った。青函連絡船への乗り換えも、青函連絡船から特急に乗り換えるのも、全部お兄さんがついてきてくれた。お兄さんとは、青森駅でお別れだった。
K子ちゃんは言った。「こういう時は、お礼をしなければいけない」。しかし、わたしたちには、お礼に渡せるものは何も無かった。「札幌に持っていく予定のお土産のお菓子を、お兄さんに渡す」とK子ちゃんが決めた。親の言いつけに背くなんてとびっくりしている私に、「そうした方が良い。大丈夫だ」とK子ちゃんは宣言した。「いいんだろうか」と迷ったが、その決定に従った。
お兄さんとお別れするときに、K子ちゃんは、「ありがとうございました」とお菓子を渡した。お兄さんは、断ったが、どうしても、と、無理やり渡したような記憶がある。
札幌行きの特急に乗れば、後は座っているだけだ。幼馴染は、「食堂車に行ってみよう」と私を誘った。地平線が見えそうなほど平らな大地を見ながら、コーンスープを飲んだ。
お兄さんは、元気だろうか。ありがとう、お兄さん。
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