かえる ビターン

子供の頃、ザリガニ釣りは男の子たちがいつもやる遊びであった。
そこらへんにたくさんいるアマガエルを捕まえて、両足をもって地面にビターンと叩きつけて殺し、それからカエルを餌にしてザリガニを釣るのだ。
「かわいそう」と思っていたが、男の子たちは、気にもせず、毎日、カエルでザリガニを釣っていた。
かわいそう、と思っているのだが、それとは裏腹に、カエルをビターンと地面に叩きつけてみたいなと、チラッと思う時があった。
「一寸の虫にも五分の魂」と、いつも両親に言われていて、殺生はいけないと思っていても、でも、やってみたいなあという気持ちは時々湧いてきた。その度に、いかんいかん、と思ってはいたが。
ある曇り空の日、私は庭で遊んでいた。そこへ、アマガエルが出てきた。
「どうしてもやってみたい」。ついに私は誘惑に耐え兼ねて、カエルの両足を持って、ビターンと地面に叩きつけてみた。
と、その時、ポツポツと急に雨が降ってきた。
「あ!空が泣いている」。
私がカエルを殺したために、カエルや空や、もしかしたら、いろんな神様が、悲しんで泣き出しような気がした。
びっくりして、怖くなって、あわてて家の中へ逃げた。
「なんて、ひどいことをしたんだろう」
外の曇り空よりも暗くてどんよりした気持ちだった。私は、皆に許してもらえるんだろうか。
後で、カエルを置いてきた場所を見に行った。カエルはいなかった。
ずーっと後になって、あの時、カエルは気を失っただけで、降り出した雨に当たって目が覚め、あわてて家へ帰って行った、ということなんじゃないかと思い当たった。
たぶん、きっとそうなのだろう。そうであってほしいと思う。
でも、あのタイミングの雨。本当にこわかった。
二度と不要な殺生はしません!と雨の間、私は家の中で誓っていたんだもの。

2015-12-21 | Posted in つれづれ, ブログNo Comments » 

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